すれ違うばかりだったけど、正直すれ違っている気はしなかった。











 そりゃあ全くと言っていいほど接点はないし(部活がグラウンド使ってるくらいか)、自分でも不思議は気分では
あるけれど、でも、あんまりおかしいとは思わなかった。というか、必然的だった気がする。なんていうか、勘と
言えばそんなものだけど。








 1番最初は入学式。緊張していた訳でもなく、どんなやつがいんのかな、と思って回りを見渡していた時。
 新入生の中で、1番凛々しい顔をしていたのが、だった。勿論、印象に残った。その毅然とした態度は、
俺の中で衝撃だった。
 その後、部活に入った俺は、陸上部で練習しているを発見した(すかさず近くのやつに名前を聞いた)。
 しかしどうにも、接点は生まれなかった。
 (そりゃあ、違うクラスだし、違う委員会だし、作りようがないよな)







 好きになっていた。初恋だった。初恋は叶わないと世間は言う。俺はそう思わない。
 好きになった人が、俺のことを好きになってくれる保障はないとして、俺が好きな限り「可能性」は消えない。
 夢見ること、夢は叶うから見るもんなんだ。そうなんだと俺はずっと思ってきたし、これからもそう思う。
 そんなことを考えながら、のことを意識し始めて、1年と半年があっという間に過ぎていた。








 それにしても、はよく俺を見ていると思う。それも、一種の勘に近いけど。
 視線を感じて、そっちを向くと必ずがいる。俺のほうを向いてはいないけど。きっと、感情を回りに悟られ
ないようにするのが、巧いんだと思う。こう考えると、脈がないってわけでもない気もするんだけどな。
 しかも、の恋愛沙汰が噂になったことは、ない。意外と狭いネットワークで生きてる中学生で、噂になって
ないってことは、多分ないってことなんだろうと思う。
 それらが、俺の期待している部分で、感情を確信めいたものを感じさせた。期待が少しずつ浮上する。







 次は数学だっていうのに、教科書を忘れた。最近、家に帰るとどうにも眠くて、準備を忘れる。っていても、いつ
も勉強道具は置いて帰ってるのにな。たまたまテスト勉強でもしようかと持って帰っただけだ。
 廊下に出ると、がいた。心が騒ぐ。
 目が合う。そして、反射的に。







 きっと、俺はこれからもを意識し続けるだろうし、この感情はそうそう変わらないものだと確信している。
 心は揺らぐし、それにきっと、も俺のことを知らないわけじゃないんだろう。
 笑顔を返してくれたことで、また、期待が増える。







 どうしようもなく、俺はが好きだ。多分、だって、俺を嫌悪してはいないと思う。
 存在は少なくとも知らないはずはないだろうし、それなら可能性は限りなくあるわけだし。
 これからだ、絶対、これから。







 たまに、俺ってとんでもなく自意識過剰なんじゃないかとも思う。
 だけど、どっかで気付いたんだ。も、俺を好きなんじゃないか、って。
 廊下ですれ違うたびに感じてしまう、この期待と嬉しさと確信と、心から溢れるほどの感情は、紛れもなく恋な
んだ。







/ユニゾンで読むのはオススメできないけれど、読まないと話がわかんないかと。